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【製造業】ニュース

安全配慮義務違反 労働者の過失2割に 後方確認運転を怠り 東京高裁(12/19)

会社は立入禁止徹底せず
製鉄所内での重機運転を請け負う会社で働く労働者が、ホイールローダーの運転中に他の車両に接触して怪我を負い、損害賠償を求めた裁判で、東京高等裁判所(木納敏和裁判長)は同社の安全配慮義務違反を認めた一審判決を維持しつつ、労働者の過失割合を2割と認定した。事故当時、労働者の作業範囲へ許可なく他の車両が立ち入ることは禁止されていた。同高裁は労働者が後方確認をしていれば容易に事故は回避でき、後方確認は車両の運転者にとって最も基本的な注意義務と指摘。一方、立入禁止ルールの不徹底という同社の安全配慮義務違反の程度に比べれば過失は小さいとして、労働者の過失割合を2割とした。  
車両の接触事故は令和元年6月24日に、千葉県内の製鉄所で起きた。事故当時、労働者は製鉄所内の重機運転作業を請け負う東京都内の会社の従業員だった。  労働者はホイールローダーを運転し、積み上げられた荷をホッパーに投入する作業を行っていた。作業終了後、後方確認をせずにまっすぐ車両を後退させたところ、停車中の別の車両に接触。翌々日の同月26日頃から首に違和感を覚えるようになり、医療機関を受診し、頚部捻挫の診断を受けた。同年12月15日には、頚部捻挫について症状固定の診断を受けたが、頸部の疼痛と頭痛が残った。  
製鉄所では、複数の企業の従業員が働き、重機が頻繁に出入りすることから、従業員の安全確保のため、複数企業間で取決め書を交わしており、同社は取決め書に基づき「安全作業動作標準」を定めていた。同動作標準には、「カラーコーンなどで作業範囲を明確にして、他の車両の進入を防止する」との規定があったが、労働者が接触した別の車両は、作業主任者の許可を得ずに労働者の作業範囲に車両を停車させていた。  
接触事故は労災と認定され、千葉労働基準監督署は通院費用などを支給した。3年4月には頸部の疼痛と頭痛を後遺障害等級準用第14級と認定し、障害補償一時金として57万9152円を支払っている。  
一審の千葉地方裁判所は、同社の安全配慮義務違反を認め、294万2394円の支払いを命じた。同社は後方確認を怠った労働者の自損事故と主張したが、立入禁止のルールがあるなかで、無断進入してきた車両を想定し、労働者に後方を確認すべき義務があったかについては疑問が残るとして、認めなかった。  
安全配慮義務については、労働者の職種、労務内容、労務提供場所などの具体的状況に応じて生じるものと強調。本事案では、複数企業間の取決めと同作業標準の周知・徹底と現場での遵守が行われて初めて尽くしたといえるとした。  
二審の同高裁は一審に引き続き、同社の安全配慮義務違反を認めつつ、労働者の過失割合を2割と認定した。労働者が後方確認をしていれば、停車などして事故を回避するのは容易であったと評価。後方確認は、一般に車両の運転者にとって最も基本的な注意義務であり、無断進入を禁止するルールがあったとしても、想定外の事態が起こり得る可能性を排除できない以上、基本的な注意義務が免除されるとはいえないとした。同社に205万7245円の支払いを命令している。

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