カスハラ対策義務 1年半以内に施行 労推法改正案上程へ 厚労省(2025/2/6)
均等法、女活法と束ね
厚生労働省は、職場でのハラスメント対策の強化や、女性活躍に関する情報公表項目の追加などを盛り込んだ労働施策総合推進法等改正法案要綱について、労働政策審議会から「妥当」との答申を得た。今通常国会に法案を提出する予定だ。同法と男女雇用機会均等法、女性活躍推進法の束ね法案となるもので、労推法では、カスタマーハラスメントに関する労働者の相談に応じ、適切に対応するための体制整備など雇用管理上の措置を事業主に義務付ける。均等法では、求職者へのセクシュアルハラスメントの防止措置義務を新設。両措置義務は法律公布から1年半以内に施行する。
改正法案要綱は、労政審の建議などを踏まえてまとめたもの。労推法では、職場におけるハラスメント防止に向けた国の責務として、「何人も労働者の就業環境を害する言動を行ってはならない」といった規範意識が醸成されるよう、必要な啓発活動を積極的に行わなければならない点を明記する。
事業主に対しては、カスハラ対策として、顧客や、取引の相手方、施設の利用者などの言動のうち、自社の労働者が社会通念上許容される範囲を超えた言動によって就業環境が害されることがないよう、労働者の相談に応じ、適切に対応するために必要な雇用管理上の措置を講じることを義務付ける。さらに、相談を行ったことや、事業主による相談対応に協力した際に、事実を述べたことを理由とした解雇など不利益な取扱いを禁止する。
ほかの事業主が雇用管理上の措置を講じるために必要な協力を求めてきた場合には、協力に応じるよう努めなければならないものとする。事業主の講ずべき措置の適切・有効な実施を図るため、厚労大臣が必要な指針を定めるとした。
同法には新たに、治療と就業の両立支援対策に関する規定も盛り込む。事業主に対し、両立に関する労働者の相談に応じ、適切に対応するための体制整備などの必要な措置を講じる努力義務を課す。加えて、指針に基づき、厚労大臣が事業主へ必要な指導を行えるようにする。
均等法では、求職者へのセクハラ防止に向け、事業主における雇用管理上の措置義務を創設する。さらに、同法に基づき選任する男女雇用機会均等推進者の業務として新たに、求職者からの相談に応じ、適切に対応するための体制整備その他必要な雇用管理上の措置などを追加する。
時限立法の女活法については、8年3月末までの有効期限を10年間延長し、18年3月末までとする。改正法の公布と同時に施行する。
そのほか、常時雇用する労働者数が100人を超える事業主を対象に、男女の賃金の差異と、管理職における女性割合を定期的に公表する義務を課す。施行は8年4月の予定。
カスハラ防止 具体例示す「指針」公表 長時間の叱責など 東京都(2025/1/16)
対応フロー手引作成へ
東京都は、カスタマー・ハラスメント防止条例の4月施行を前に、カスハラの具体例などをまとめたガイドラインを策定した。厚生労働省のマニュアルを参考にカスハラを分類し、より具体的に、どのような事例がカスハラに該当するかを示した。「必要以上に長時間にわたって厳しい叱責を繰り返すこと」、「土下座を強要すること」など31例を挙げている。さらにカスハラ対策を推進するため、今年度中に、事業者や業界団体が現場でカスハラ対策を行う際の対応フローをまとめたマニュアルを作成する。
カスハラ行為の分類には、就業者への身体的な攻撃、就業者を拘束する行動など、15分類を設けた。分類ごとに具体例を示している。
就業者への精神的な攻撃が認められる例としては、「就業者や就業者の親族に危害を加えるような言動」、「多数の人がいる前で就業者の名誉を傷つける言動」など4項目を紹介する。威圧的な言動の例には、「就業者に声を荒らげる、にらむ、話しながら物を叩くなどの言動」、「就業者の話の揚げ足を取って責め立てること」、「就業者の話を遮るなど高圧的に自らの要求を主張すること」が該当する。
都の担当者は、「具体例は限定列挙ではないことに注意が必要だが、正当なクレームとカスハラとを判断するための一助としてもらいたい」と話している。
条例では事業者に対し、「カスタマー・ハラスメントを受けた就業者への配慮、カスタマー・ハラスメント防止のための手引の作成その他の措置を講ずるよう努めなければならない」と規定している。このほど公表したガイドラインでは、事業者が行うべき措置の詳細も示した。相談窓口設置や現場での初期対応の手順などを挙げている。
事業者が手引きを作成する際の拠り所とするため、都は「ひな形」となる共通マニュアルを作成する。マニュアルではカスハラの発生場面別に対応方針を示す。たとえば電話による長時間の拘束が発生している場合、「〇〇分以上やりとりが続いている」など、適切な対応時間の目安を設定した上で、「堂々巡りの状況が続いた場合、対応を打ち切る」といったルールを設ける。具体的な拘束時間は、事業者や業界団体ごとに設定することが望ましいとした。
マニュアルには未然防止策も盛り込む予定だ。具体的には、就業者の不用意な言動がカスハラを誘発してしまう状況を防ぐため、教育や研修の実施を促す。