年金繰上げ繰下げの制度詳解
2026/05/06
年金の受給開始時期を調整する「繰上げ」や「繰り下げ」は、将来の生活設計に大きな影響を与える重要な制度です。本ブログでは、年金繰上げ繰下げの基本的な仕組みから、受給額や受給期間への具体的な影響、申請手続きの流れまでを詳しく解説します。制度を正しく理解し、賢く活用することで、経済的な安心を確保するための一助になれば幸いです。
目次
~ 繰上げ・繰下げ制度を社会保険労務士がわかりやすく解説 ~
「年金は65歳から受け取るもの」
そう考えている方は非常に多いですが、実は現在の年金制度では、受給開始時期を自分で選択できることをご存じでしょうか。
老齢年金には、
・早く受け取る「繰上げ受給」
・遅らせて増やす「繰下げ受給」
という制度があります。
この選択によって、毎月の年金額だけではなく、生涯で受け取る総額や老後の安心感まで大きく変わります。近年は、物価上昇や定年延長、70歳以降も働く方の増加などにより、「何歳から年金を受け取るべきか」という相談が急増しています。
しかし実際には、
・「何となく早くもらった方が得そう」
・「繰下げすると必ず得なのでは?」
・「健康に不安があるから迷う」
・「働いていると年金はどうなる?」
など、誤解や不安を抱えたまま判断されているケースも少なくありません。年金は、一度選択すると後から取り消せない制度もあります。だからこそ、“自分に合った選択”が非常に重要なのです。
繰上げ受給とは?
早く受け取れる代わりに「一生減額」
繰上げ受給とは、本来65歳から受給する老齢年金を、60歳から前倒しで受け取る制度です。
ただし、早く受け取る代わりに、年金額は生涯減額されます。
2022年4月以降の制度改正により、減額率は次の通り変更されました。
1962年4月2日以後生まれの方
→ 1か月あたり0.4%減額
1962年4月1日以前生まれの方
→ 1か月あたり0.5%減額
例えば、60歳から繰上げ受給した場合、65歳より60歳で受給開始⇒60か月×0.4%=24%減額
つまり、生涯にわたり24%減額された年金額となります。
ここで重要なのは、「一生減額」であるという点です。
物価上昇によって年金額自体は改定されても、“減額率”は一生変わりません。
繰下げ受給とは?
年金を増やせる制度
一方、繰下げ受給とは、65歳以降に年金受給を遅らせる制度です。
最大75歳まで繰下げ可能となっており、1か月遅らせるごとに0.7%増額されます。
75歳まで繰下げた場合、
120か月×0.7%=84%増額となり、年金額は84%増となります。
例えば、65歳時点で月15万円の年金であれば、75歳繰下げ後→ 約27万6,000円
まで増える可能性があります。
長生きリスクへの備えとして非常に強力な制度ですが、一方で注意点もあります。
「繰下げ=得」とは限らない理由
最近は「繰下げがお得」という情報をよく見かけます。
確かに、長生きすればするほど有利になる可能性があります。しかし、実務では単純ではありません。
例えば、健康状態、家族歴、働き方、退職時期、配偶者の有無、貯蓄額、住宅ローン、在職老齢年金
、税金・社会保険料などによって、最適解はまったく変わります。
特に注意が必要なのは、在職老齢年金との関係です。
60歳以降も働きながら厚生年金に加入している場合、給与と年金額によっては、年金の一部または全部が支給停止になるケースがあります。また、繰下げによって年金額が増えると、所得税、住民税、介護保険料
、後期高齢者医療保険料などが上昇する可能性もあります。つまり、「年金額が増えた=手取りがそのまま増える」とは限らないのです。
実は見落とされやすい「加給年金」の注意点
繰下げ相談で非常に多いのが、「加給年金」の見落としです。
配偶者が年下の場合、一定条件を満たせば加給年金が支給されますが、繰下げ中は加給年金を受け取れません。つまり、「増額を待った結果」、「加給年金を数年間失った」というケースもあります。
年金相談では、“単純な損得”ではなく、制度全体で考える必要があるのです。
社会保険労務士として感じること
年金相談の現場では、
「もっと早く相談すれば良かった」
という声を非常によく耳にします。
特に最近は、70歳まで働く方、定年後も再雇用される方、自営業と会社員経験が混在する方、離婚や再婚がある方、3号不整合や未納期間がある方など、年金記録や受給戦略が複雑化しています。年金は「申請主義」です。つまり、自分で確認し、自分で選択しなければなりません。だからこそ、専門家による事前シミュレーションが重要になります。
こんな方は一度ご相談ください
繰上げと繰下げ、どちらが良いか迷っている
60歳以降も働く予定がある
年金額を正確に知りたい
在職老齢年金が不安
配偶者との年齢差がある
将来の生活設計を見直したい
自分の年金記録に不安がある
年金は、「知らなかった」で数百万円単位の差が出ることもあります。
当事務所では、制度説明だけではなく、
将来の働き方
家計状況
税金
老後資金
配偶者とのバランス
まで含めて、実務的な視点からご相談を承っています。