女性活躍推進法と賃金格差分析
2026/05/13
女性活躍推進法は“女性のための法律”ではありません
― 企業の採用力・定着率・組織力が問われる時代へ ―
女性活躍推進法の改正により、多くの企業で「対応が必要な法令がまた増えた」と感じている経営者の方も多いかもしれません。しかし、社会保険労務士として現場を見ていると、今回の改正は単なる法令対応の話ではありません。本質は、“会社の組織設計が外から見える時代になった”
ということです。
女性活躍推進法では、男女間賃金差異や女性管理職比率などの情報公表が求められています。今後は対象企業の拡大も進み、「うちはまだ先の話」とは言えなくなってきました。ここで重要なのは、数字そのものではありません。なぜ、その数字になっているのか。そこに企業の課題が現れます。
目次
男女の賃金差は「差別」の証明ではない。でも説明は必要
「男女間賃金差異」と聞くと、「うちは男女で給与テーブルを分けていない」
「差別しているつもりはない」という声をよく聞きます。それはその通りかもしれません。
実際、賃金差異の多くは、
①管理職比率の違い
②正社員/非正規の構成差
③勤続年数の差
④育休・時短勤務の影響
⑤配置や職種の偏り
といった構造要因から生じます。
つまり問題は、“差があること”ではなく、“なぜ差があるのか説明できるか”です。
ここを曖昧にすると、
①求職者からは「働きにくい会社」
②従業員からは「評価が不透明な会社」
③取引先からは「ガバナンスの弱い会社」
と見られる可能性があります。
女性が管理職を目指さない会社には共通点がある
添付資料でも非常に重要な視点として示されていたのが、「女性が管理職を目指さないのは、本人の意欲の問題ではない」という点です。
現場ではよく、「本人が希望しないから」、「責任を負いたくないと言われた」という話があります。
しかし、その背景を掘ると、
①管理職=長時間労働というイメージ
②家庭との両立が難しい
③ロールモデルがいない
④評価基準が見えない
⑤管理職になるまでのキャリアパスが不透明
⑥挑戦して失敗しにくい文化がない
という構造的な問題が見えてきます。
これは女性の問題ではありません。会社の設計の問題です。
女性活躍推進は「優遇」ではなく“離職防止策”
経営者の中には、「女性だけ特別扱いするのか?」、「逆に不公平では?」と感じる方もいます。
ここは誤解されやすいポイントです。例えば女性の健康課題への配慮。月経、更年期、不妊治療、妊娠・出産などは、働き方に影響することがあります。添付資料でも、こうした健康支援は福利厚生ではなく、就業継続支援として整理されています。重要なのは、“特別扱い”ではなく、“働き続けられる環境整備”という視点です。実際、多くの離職は「能力不足」ではなく、“続けられなかった”ことが原因です。採用難の時代において、これは非常に大きな経営損失です。
情報公表は採用ブランディングそのもの
いまの求職者は企業を調べます。
①給与
②福利厚生
③離職率
④育休取得
⑤女性管理職比率
こうした情報は「企業選び」の重要な判断材料です。つまり女性活躍推進法への対応は、
法令遵守ではなく採用戦略でもあります。人手不足の時代に、「選ばれる会社」と「避けられる会社」の差はここで広がります。
社労士として感じる“本当の課題”
制度だけ整えても意味はありません。
よくあるのが、
①制度はあるが誰も使えない
②時短勤務が昇進の不利になる
③上司の理解がない
④数字だけ作って終わる
というケースです。
本当に必要なのは、
制度設計 × 運用設計 × 管理職教育
です。
例えば、
①賃金差異の分析
②評価制度の見直し
③キャリアパスの明確化
④管理職研修
⑤ハラスメント対策
⑥健康配慮ルール整備
⑦情報公表内容の整理
ここまで整えて初めて機能します。
女性活躍推進法対応で会社の“本質”が見える
今回の法改正は、
「女性を増やしましょう」
という単純な話ではありません。
本質は、“誰が働いても力を発揮できる会社か”です。
女性活躍推進に本気で取り組む会社は、
結果として、
①離職率が下がる
②採用力が上がる
③管理職の質が上がる
④ハラスメントが減る
⑤組織の透明性が上がる
という変化が起きます。
つまりこれは、人事施策ではなく経営戦略です。
最後に
女性活躍推進法への対応を、「義務だからやる」で終わらせるか、
「会社を強くする機会」にするかで結果は大きく変わります。
数字を公表する時代は、“何をやっている会社か”より、“どういう会社か”が見える時代です。
もし、自社の賃金差異をどう分析すべきか分からない、情報公表の実務に不安がある、管理職育成をどう進めるべきか悩んでいる、制度があるのに活用されない、というお悩みがあれば、そこはまさに社会保険労務士の支援領域です。法令対応だけでなく、“人が辞めない組織づくり”まで一緒に設計する。
それが、これからの社労士の役割だと考えています。
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