育成就労制度の効果と実践法
2026/08/31
育成就労制度は、これまでの技能実習制度に代わる新たな外国人材の受入れ制度として、2027年4月からスタートします。外国人材を一定期間の就労を通じて育成し、特定技能1号の技能水準につなげていくことを目指す制度で、「人材育成」と「人材確保」の両方を目的としている点が大きな特徴です。
制度開始に先立ち、2026年9月1日からは育成就労計画の施行日前申請が開始されます。外国人材を受け入れている企業や、今後受入れを検討している企業にとっては、いよいよ具体的な準備を進める時期に入ったといえるでしょう。
本記事では、育成就労制度の基本的な仕組みと9月1日から始まる施行日前申請について整理するとともに、申請時期や手数料、受入れ企業が今から確認しておきたいポイントを分かりやすく解説します。
目次
育成就労制度とは何か?その誕生背景と目的を探る
育成就労制度は、これまでの技能実習制度を発展的に解消し、新たに設けられる外国人材の受入れ制度です。
技能実習制度が「人材育成を通じた国際貢献」を目的としてきたのに対し、育成就労制度では、外国人を受け入れて人材を育成するとともに、人材を確保することが制度の目的として明確に位置付けられています。
基本的には、一定期間の就労を通じて、特定技能1号の技能水準にまで外国人材を育成していく仕組みとなります。
つまり、単に外国人材を一定期間受け入れる制度ではなく、「受け入れる」→「育成する」→「特定技能につなげる」という中長期的な人材育成を前提とした制度になっていく点が大きな特徴です。
2026年9月1日から「施行日前申請」がスタート
育成就労制度そのものの施行は2027年4月ですが、それに先立ち、2026年9月1日から育成就労計画の認定に関する施行日前申請の受付が始まります。
外国人技能実習機構の案内では、施行日前申請の受付期間は、2026年9月1日から2027年3月31日までとされています。ただし、「3月31日までに申請すればよい」という意味ではない点に注意が必要です。
審査に要する期間などを考慮し、原則として、育成就労を開始する予定日の7カ月前から5カ月前までの間に申請するよう案内されています。
2027年4月以降、早い時期から育成就労を開始する予定の企業では、早めに準備を進める必要があります。
そもそも「育成就労計画」とは?
育成就労制度では、外国人を受け入れて働いてもらうだけではなく、どのように育成していくのかを計画として作成し、認定を受けることが重要になります。今回の施行日前申請でも、まず育成就労計画を作成します。計画は原則として、2027年4月1日以降に育成就労を開始する時点の状況に基づいて作成することとされています。そのため、申請時点の会社の状況だけを見ればよいとは限りません。
たとえば、今後、会社の合併や分割を予定している個人事業から法人化する予定があるといった場合には、それぞれ必要な手続きを済ませた後に申請するよう案内されています。受入れ予定時点での会社の状況を見据えて準備する必要があります。
認定申請にはいくらかかる?
今回案内されている育成就労計画の認定申請手数料は、1件(1名)につき6,100円です。
これに加えて、システム利用料572円が必要とされています。
手数料については払込票を取り寄せ、コンビニエンスストアまたはゆうちょ銀行・郵便局の窓口で払い込む方法が案内されています。また、ペイジー払いについては9月1日に案内が掲載される予定とされています。
複数の外国人材を受け入れる場合には人数に応じた費用も考慮し、申請準備を進めておきましょう。
申請方法と認定通知の時期は?
育成就労計画の認定申請は、郵送または外国人技能実習機構の地方事務所・支所への来所によって行います。郵送する場合は、申請者の住所地、法人の場合は本店所在地を担当する地方事務所・支所が申請先となります。
認定通知書については、2027年4月1日以降、順次郵送で通知される予定です。
制度開始直前になって慌てて準備するのではなく、実際に育成就労を開始したい時期から逆算して手続きを進めることが重要です。
育成就労制度の基礎知識と企業担当者が押さえるべきポイント
育成就労制度は、これまでの技能実習制度に代わる新たな外国人材の受入れ制度です。外国人材を一定期間の就労を通じて育成し、特定技能1号の技能水準につなげていくことを目指しており、「人材育成」と「人材確保」を目的としている点が大きな特徴です。
企業担当者がまず押さえておきたいのは、単に外国人材を受け入れるだけではなく、計画的に育成し、安心して働き続けられる環境を整備することです。そのためには、育成就労計画の作成をはじめ、適切な労働条件の設定、技能や日本語能力の向上に向けた支援、相談体制の整備など、受入れ後を見据えた準備が重要になります。
また、育成就労制度では、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められる仕組みも設けられます。そのため企業には、外国人材を「受け入れる」だけでなく、「育て、定着してもらう」という視点がこれまで以上に求められるでしょう。
2027年4月の制度開始に先立ち、2026年9月1日からは育成就労計画の施行日前申請が始まります。外国人材を受け入れている企業や今後受入れを検討している企業は、制度の基本を理解したうえで、自社の受入れ・育成体制を早めに確認しておくことが大切です。
技能実習から育成就労へ―企業側の意識も変える必要があります
今回の制度変更で企業が注目すべきなのは、申請書類の変更だけではありません。
育成就労制度では、外国人材を企業の人材としてどのように育成し、定着につなげるのかという視点が、これまで以上に重要になります。
外国人雇用について、「人手が足りないから外国人を採用する」だけではなく、
「どのような仕事を担当してもらうのか」
「どのように技能を身につけてもらうのか」
「日本語能力の向上をどう支援するのか」
「安心して働き続けられる職場になっているか」
といったことまで考える必要があります。
外国人材の採用を、単なる「人手不足対策」ではなく、採用・育成・定着を一体として考える人事戦略に変えていくことが求められるでしょう。
「転籍」が認められることも大きな変更点
育成就労制度を考えるうえで、企業が押さえておきたいポイントの一つが、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められる仕組みが設けられることです。 技能実習制度では、原則として本人の都合だけで実習先を変更することは難しい仕組みでした。 育成就労制度では一定の要件を満たした場合に本人意向による転籍が可能になるため、受入れ企業側には、 「採用できる会社」だけでなく、「選ばれ続ける会社」になること がこれまで以上に重要になります。 賃金だけでなく、職場の人間関係、教育体制、労働時間、休日、相談体制、生活面での支援なども、定着を左右する要素になってくるでしょう。
外国人雇用でも基本的な労務管理が重要
外国人労働者であっても、日本人労働者と同様に、労働基準法をはじめとする労働関係法令が適用されます。
そのため、育成就労制度への対応とあわせて、企業では基本的な労務管理についても点検しておきたいところです。
特に、
労働条件を適切に明示しているか 、労働時間を適正に把握しているか、 残業代を適切に支払っているか、 年次有給休暇を適切に取得させているか 、社会保険・労働保険の手続きを適切に行っているか 、ハラスメントや相談への対応体制があるか、 外国人労働者が理解できる形で必要な情報を伝えているか
といった点は重要です。
新しい制度への対応に目が向きがちですが、日常的な労務管理が適正に行われていることが外国人材の定着にもつながります。
これから外国人材を受け入れる企業が確認したいこと
2027年4月の制度開始に向け、育成就労制度を利用する予定の企業では、早めに準備を始める必要があります。
特に確認したいのは、「いつから育成就労を開始する予定なのか」という点です。
開始予定日が決まれば、そこから申請時期を逆算できます。
そのうえで、育成就労計画の作成、受入れ体制の整備、労働条件の確認、教育・育成方法、相談体制などを具体化していくことになります。
現在、技能実習生を受け入れている企業についても、「今までと同じ外国人雇用を続ければよい」と考えず、新制度に合わせて受入れ体制を見直すことが重要です。
まとめ
2027年4月からスタートする育成就労制度に向け、2026年9月1日から育成就労計画の施行日前申請が開始されます。
施行日前申請の受付期間は2027年3月31日までですが、審査期間などを考慮し、原則として育成就労開始予定日の7カ月前から5カ月前までの申請が案内されています。
また、認定申請手数料は1名につき6,100円で、別途システム利用料572円が必要とされています。
今回の申請開始は、技能実習制度から育成就労制度への移行が、いよいよ企業の実務に入ってきたことを意味します。
外国人材を受け入れている企業、これから受入れを予定している企業では、申請手続きだけではなく、労働条件、育成方法、労務管理、相談体制、定着支援まで含めた受入れ体制を早めに確認しておきましょう。