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「国保逃れ」38社・1万1,610人を確認

「国保逃れ」38社・1万1,610人を確認

2026/09/15

社会保険は“形式だけ”では通らない

 国民健康保険料の負担を抑える目的で、一般社団法人などの役員に就き、社会保険へ加入する、いわゆる「国保逃れ」が問題となっています。 厚生労働省は、2026年3月から8月末までに事業所調査を行った結果、38社、1万1,610人について、いわゆる「国保逃れ」が確認され、社会保険の資格を失ったと発表しました。 社会保険は、法人の役員になれば形式的に必ず加入できるというものではありません。今回のニュースは、社会保険の加入について、契約書や役職名だけではなく、実際の就労状況や報酬、業務の実態などを踏まえて判断されることを改めて示すものといえます。

「国保逃れ」とは

 国民健康保険は、自営業者や個人事業主などが加入する医療保険制度です。 一方、一定の要件を満たす法人の役員や従業員は、健康保険・厚生年金保険といった社会保険に加入します。 今回問題となっているのは、国民健康保険の保険料負担を抑えることなどを目的として、一般社団法人などの役員となり、社会保険へ加入するケースです。 報道では、こうした仕組みが「国保逃れ」と呼ばれています。 ただし、「国保逃れ」という表現自体は報道上の呼称です。すべての法人役員への就任や社会保険加入が問題になるわけではなく、個別の加入実態が適正かどうかが重要です。

厚生労働省の調査で38社・1万1,610人

 厚生労働省は2026年3月、こうした事案への対応を強化するため通知を出し、その後、事業所に対する調査を進めてきました。 その結果、3月から8月末までの間に、 38社 、1万1,610人 について、いわゆる「国保逃れ」が確認され、社会保険の資格を失ったとされています。 1万人を超える規模となっていることからも、厚生労働省が社会保険の適用適正化を重視していることがうかがえます。 今後も調査や指導を継続するとしており、類似する加入形態について確認が強化される可能性があります。

社会保険は「役員になったから加入できる」とは限らない

 ここで企業や役員が注意したいのが、肩書きや契約書だけで社会保険の加入資格が決まるわけではないという点です。 法人の代表者や役員について社会保険の被保険者資格が認められるかどうかは、役員報酬を受けているかという点だけではなく、法人との実質的な使用関係なども踏まえて判断されます。 たとえば、名目上は役員となっていても、 実際にはほとんど業務を行っていない、 法人運営への関与がほとんどない 、報酬や勤務実態が形式的なものにとどまっている 、といった場合には、社会保険への加入が適正かどうか確認される可能性があります。 逆に、役員であるというだけで問題になるわけでもありません。 重要なのは、法人と本人との関係に実態があるかどうかです。

「社会保険料を安くできる」という提案には注意

 今回のニュースは、企業経営者や個人事業主にとっても注意すべき内容です。 近年、社会保険料や国民健康保険料の負担を軽減できるとして、さまざまな仕組みやスキームが紹介されることがあります。 しかし、社会保険の加入資格は、本人が希望すれば自由に選択できるものではありません。 制度上の要件を満たしている必要があります。 そのため、 「法人の役員になれば国民健康保険料を安くできる」 「形式的に役員報酬を設定すれば社会保険に加入できる」 といった説明を受けた場合には、その仕組みが社会保険制度上、本当に適正なのか慎重に確認する必要があります。 一時的に保険料負担が軽くなったとしても、後から被保険者資格が否定されれば、健康保険や年金の取扱いにも影響が生じる可能性があります。

企業側も社会保険の加入状況を再確認したい

 今回の問題は、個人の保険料負担だけの話ではありません。 企業にとっても、社会保険の資格取得・喪失手続きを適正に行うことは重要な労務管理の一つです。 特に、 役員の社会保険加入 、非常勤役員の取扱い 、複数法人から報酬を受けている場合 、実態の分かりにくい勤務形態 、法人設立時の社会保険加入 などについては、形式的な判断だけで処理しないことが大切です。 加入資格に疑問がある場合には、年金事務所や専門家へ確認したうえで対応した方が安全です。

社労士からのワンポイントアドバイス

 社会保険については、「加入したいから加入する」「保険料を抑えたいから加入方法を変更する」という考え方は適切ではありません。 大切なのは、実際の働き方や法人との関係に応じて、正しい制度を適用することです。 社会保険料は企業にとっても個人にとっても大きな負担となるため、負担軽減の方法に関心が集まりやすい分野です。 しかし、保険料の節約だけを優先した形式的な制度利用は、後から資格を否定されるリスクがあります。 役員の加入資格や複雑な雇用形態について判断に迷う場合は、手続きを行う前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

 厚生労働省の調査により、2026年3月から8月末までに、38社・1万1,610人について、いわゆる「国保逃れ」が確認され、社会保険の資格を失ったことが明らかになりました。 今回のニュースから企業が押さえておきたいのは、社会保険の加入資格は、役員という肩書きや書面だけではなく、実際の業務や報酬などの実態を踏まえて判断されるということです。 厚生労働省は今後も調査や指導を継続するとしています。 企業では、役員や従業員の社会保険加入状況について、形式と実態が一致しているか改めて確認しておくことが重要です。

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