「静かなる退職」は怠けではない ~滞留社員をどう見るか~
2026/05/27
「辞めていないから安心」が最も危険
出勤している。指示された仕事はこなしている。大きな問題も起こしていない――。一見すると問題のない社員に見えても、実は気持ちの上ではすでに会社から離れているケースがあります。いわゆる「静かなる退職(Quiet Quitting)」です。会社を辞める意思表示はしていなくても、必要最低限の仕事しかしない状態が続けば、組織の生産性や職場の雰囲気に大きな影響を与えます。
静かなる退職は「本人の問題」と決めつけてはいけない
「やる気がない」「最近の若い社員は意欲が低い」と片づけたくなるかもしれません。しかし、人が仕事への意欲を失う理由は一つではありません。若手なら育成不足、中堅なら評価や将来への不満、ベテランなら期待されていないという諦めが背景にあることもあります。表面的な行動だけで判断すると、本当の原因を見誤ります。
社員は全員同じではない――タイプ別に見るマネジメントの重要性
社員を年代と意欲・能力で分類すると、見える景色が変わります。20代の「問題児」、30代・40代の「未開花者」、50代以上の「窓際社員」。同じように“動かない社員”に見えても、必要な対応はまったく異なります。叱るべきケースもあれば、配置転換や役割変更が必要なケースもあります。重要なのは、「なぜこの状態になっているのか」を見極めることです。
叱責では人は動かない時代
かつては厳しく指導することで成長する時代もありました。しかし今は違います。強い叱責は委縮や反発を生み、さらにエンゲージメントを低下させることがあります。特に“静かなる退職”状態の社員に対して感情的な対応をすると、表面上は従っていても、心はさらに離れていきます。
問うべきは「本人のやる気」ではなく「配置の適正」
社労士として多くの職場を見ていると、本人の問題と思われていたケースが、実は配置ミスだったということは少なくありません。
・仕事と本人の強みが合っていない
・上司との関係性に課題がある
・期待されている役割が曖昧
・評価の納得感がない
こうした状況では、どれだけ優秀な社員でも力を発揮できません。
本当に怖いのは「辞める社員」ではなく「残っている滞留社員」
退職者は目に見えます。しかし、本当に経営に影響を与えるのは、辞めずにモチベーションを失っている社員かもしれません。周囲の士気を下げ、生産性を落とし、場合によっては若手の離職を誘発することもあります。
人手不足時代の経営課題は「採用」だけではない
人が採れない時代、多くの会社が採用に注力します。しかし、その前に確認すべきことがあります。 「今いる社員は、本当に活き活きと働いているか?」 採用コストをかけて新しい人を迎えても、既存社員が静かに離職状態では根本解決にはなりません。
社労士としてお手伝いできること
静かなる退職の背景には、評価制度、配置、マネジメント、コミュニケーション、職場環境など複数の要因が絡んでいます。つまり、個人の問題として処理しても解決しません。
だからこそ第三者の視点で、
・滞留社員の原因分析
・適材適所の配置設計
・管理職向けマネジメント支援
・エンゲージメント改善
・離職防止の仕組みづくり
まで含めて取り組むことが重要です。
「辞める社員」への対応より、「辞めていないけれど心が離れている社員」への対応のほうが、実は経営インパクトは大きいのです。