10月の新着情報について
10月がスタートしました。暦の上では秋も深まる時期ですが、今年はまだまだ暑さを感じる日が続いています。朝晩は少しずつ過ごしやすくなってきたものの、日中との寒暖差もありますので、引き続き体調管理には気をつけたいところです。
さて、現在、愛知・名古屋では「第20回アジア競技大会」が開催されています。日本での開催は1994年の広島大会以来32年ぶりで、アジア45の国と地域から集まった選手たちが、さまざまな競技で熱戦を繰り広げています。大会は10月4日までということで、最後まで選手の皆さんの活躍を応援したいですね。
そして、企業の人事労務に目を向けると、10月1日から重要な制度変更も始まります。
これまで当サイトでも取り上げてきた「カスタマーハラスメント対策」に加え、就職活動中の学生やインターンシップ参加者などの求職者等に対する「セクシュアルハラスメント対策」が、すべての事業主に義務化されました。
企業には、方針の明確化や周知、相談体制の整備など、ハラスメントを防止するための具体的な対応が求められます。制度を知っているだけではなく、自社で実際に対応できる状態になっているか、この機会に改めて確認しておきたいところです。
スポーツの秋、そして制度改正の秋と、さまざまな話題とともに10月もスタートです。
今月も、労働・社会保険に関する制度改正や人事労務、助成金、働き方など、企業経営や日々の労務管理に役立つ情報を分かりやすくお届けしてまいります。
季節の変わり目で体調を崩しやすい時期でもあります。皆さまどうぞ体調にお気をつけて、実りある秋をお過ごしください。
「国保逃れ」是正へ厚労省が通知 社会保険の加入資格は雇用・報酬の実態で判断(10/9)
厚生労働省は、個人事業主やフリーランスが、形式的な雇用契約によって社会保険に加入する、いわゆる「国保逃れ」の問題を受け、被保険者資格の取扱いを明確にする通知を発出しました。
問題となっているのは、勤務時間が極端に短い労働者として雇用し、健康保険・厚生年金保険の資格取得届を提出する一方、本人から報酬を上回る「会費」を徴収するなどの事例です。
通知では、報酬が業務の対価として経常的に支払われていると認められず、かつ、業務が経常的な労務提供と認められない場合には、被保険者資格を有しないものとして取り扱うことが示されました。
具体例として、勤務時間が極端に短い場合や、業務内容がアンケートへの回答、勉強会への参加など、実質的に自己研鑽にとどまる場合が挙げられています。
■感想
社会保険の加入資格は、雇用契約書や届出の形式だけでなく、実際の働き方や報酬の実態に基づいて判断されることが重要です。
今回の通知は、保険料負担を抑えることを目的とした形式的な雇用によって、本来加入すべき国民健康保険や国民年金の適用を逃れる行為に対応するものです。
一方で、短時間勤務や副業・兼業そのものが問題となるわけではありません。通常の社会保険の加入要件を満たし、実際に労務を提供している場合とは区別して考える必要があります。
企業では、社会保険の資格取得手続きを行う際、雇用契約の内容と勤務実態、業務内容、報酬の支払いが一致しているかを確認することが大切です。
適正な社会保険手続きは、企業と従業員双方の安心につながります。
育児・介護休業法の就業規則改定で誤り多発 短時間勤務制度の「準用」に注意(10/8)
栃木労働局は、2025年10月から義務化された「柔軟な働き方を実現するための措置」について、就業規則の記載に誤りが多く見られるとして注意を呼び掛けています。
問題となっているのは、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者向けの措置として、短時間勤務制度を選択している企業の規定です。
3歳未満の子を養育するための短時間勤務制度では、所定労働時間が1日6時間以下の労働者を対象から除外できます。一方、3歳から就学前の柔軟な働き方の措置として設ける短時間勤務制度では、同じ除外規定をそのまま適用できません。
そのため、既存の短時間勤務制度を単に「準用する」と定めている場合、法令の基準を下回るおそれがあります。
同労働局は、対象者の範囲を明確にする規定例や是正方法を示し、企業への周知を進めています。
■感想
就業規則は、改定しただけでは法改正への対応が完了したとはいえません。
今回の事例で特に注意したいのは、既存の規定を活用しようとした結果、意図せず法令違反につながる可能性があることです。
育児・介護休業規程には、似た名称の制度が複数あります。しかし、対象年齢や利用条件、除外できる労働者の範囲は必ずしも同じではありません。
企業では、柔軟な働き方の措置として短時間勤務制度を選択している場合、「準用する」という記載だけで済ませていないか、準用元の除外規定まで引き継いでいないかを確認することが重要です。
制度を設けることだけでなく、対象となる従業員が適切に利用できる規定になっているか。この機会に育児・介護休業規程を点検しておきたいところです。
健康診断は「受けて終わり」ではない―有所見者への医師等の意見聴取は3カ月以内(10/7)
東京・池袋労働基準監督署は、定期健康診断で有所見となった労働者について、労働安全衛生法で求められている医師等からの意見聴取を3カ月以内に実施していない違反が散見されるとして、ルールの周知を強化しています。
特に、労働者がそれぞれのタイミングで健康診断を受診している事業場で、全員分の結果がそろってからまとめて医師等の意見を聴く運用としている場合、早く受診した労働者について3カ月を超えてしまうケースがみられるとしています。
実際に、健診実施機関から年度末に全員分の結果がまとめて返却されていたため、期限内に意見聴取ができず、是正勧告を受けた事例もあったとのことです。
■感想
健康診断については、毎年きちんと実施していれば対応できていると思いがちですが、「健康診断を実施すること」と「結果を踏まえて適切に対応すること」は別の管理が必要です。
特に注意したいのが、「全員分がそろってからまとめて処理する」という運用です。事務処理としては効率的でも、受診時期に差があれば、結果として3カ月以内の意見聴取ができない可能性があります。
また、本人に再検査や精密検査を勧めることだけで終わらせず、会社として必要な対応が適切に行われているか確認することも重要です。
「健康診断を実施したか」だけではなく、「有所見者について、その後の対応まで管理できているか」。この機会に、自社の健康診断後の運用フローを確認しておきたいところです。
障害者雇用にAIを活用―定型業務をAIに任せ、人の判断・創造性を生かす好事例(10/6)
高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、2026年度の障害者雇用優良事業所等表彰式を開催しました。
「デジタル技術の活用」をテーマに募集した職場改善の好事例では、業務の定型的な部分をAIに移管し、人の判断や創造性が生きる部分を障害者に任せる取組みを行った株式会社SHIFTなどが受賞しました。
表彰式にあわせて開催されたトークセッションでは、AIによって障害者の仕事が代替されることへの懸念について、受賞事業所から「障害者が単純作業しかできないという認識自体を変えることが重要」との意見も示されました。
■感想
生成AIなどの普及によって、これまで障害者が担当してきた定型業務がAIに置き換わる可能性も考えられます。一方、今回の事例は、AIを「仕事を奪うもの」ではなく、「人がより能力を発揮できる仕事へ移行するためのツール」として活用できる可能性を示しています。
障害者雇用では、雇用率を満たすことだけを目的とするのではなく、一人ひとりの特性や能力を踏まえて、どのような仕事で力を発揮してもらうかを考えることが重要です。
AIの導入が進むこれからは、「障害者にどの仕事を任せるか」ではなく、「AIと人のそれぞれの強みを生かして仕事をどう再設計するか」という視点も、企業の障害者雇用に求められていきそうです。
「残業は月45時間以下」の行政指導を見直し―厚労省が過重労働防止の通知を改正(10/5)
厚生労働省は、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に関する通知の一部を改正しました。
改正前は、月45時間を超える時間外労働が可能な36協定を締結している場合でも、実際の時間外労働を月45時間以下とするよう指導するとしていました。また、休日労働についても、実際の休日労働をできる限り最小限とするよう指導する方針が示されていました。
改正後は、こうした記載を見直し、36協定の内容が指針の趣旨を踏まえて適切に運用されるよう指導する内容となり、休日労働をできる限り最小限にするとの記載も削除されています。
■感想
今回の改正で注意したいのは、36協定や時間外労働の上限規制そのものが緩和されたわけではないという点です。変更されたのは、労働基準監督署による行政指導に関する通知の内容です。
そのため、「今後は月45時間を超えて残業させても問題ない」と捉えるのは適切ではありません。企業としては、36協定を届け出るだけでなく、協定内容に沿って実際の時間外労働を適切に管理することが引き続き重要です。
特に特別条項付き36協定を利用している企業では、「特別条項があるから長時間労働が自由にできる」と考えず、実際の労働時間と36協定の運用状況を改めて確認しておきたいところです。
長時間労働が疑われる事業場の38.5%で違法残業―厚労省が監督指導結果を公表(10/2)
厚生労働省がまとめた2025年度の監督指導結果によると、長時間労働が疑われる2万9,150事業場に監督指導を実施し、そのうち78.5%で何らかの法令違反が確認されました。
特に、38.5%の事業場で違法な時間外労働が確認され、時間外労働の上限規制を超えていたケースや、36協定で定めた時間を上回っていたケースなどがみられました。
また、20.3%では健康診断の未実施や客観的な方法による労働時間把握の未実施など、法令に基づく健康障害防止措置について是正勧告が行われています。
なお、今回の結果は全国すべての事業場を対象としたものではなく、月80時間を超える時間外・休日労働が疑われる事業場や、過労死等の労災請求が行われた事業場などを対象とした監督結果です。
■感想
今回の結果から改めて確認しておきたいのは、36協定を届け出ているだけでは、長時間労働への対応が十分とはいえないということです。
企業では、36協定で定めた時間を超えていないかを継続的に確認するとともに、長時間労働者の健康確保や、客観的な方法による労働時間の把握まで含めて管理する必要があります。
特に「月45時間」「月80時間」「月100時間未満」「年720時間」など、時間外労働をめぐっては複数の基準があり、混同しやすいところです。
「36協定は毎年提出しているから大丈夫」と考えるのではなく、実際の残業時間と協定内容、特別条項の運用、健康確保措置まで適切に管理できているか、改めて確認しておきたいところです。
育児・介護休業法の是正指導が5倍超―大阪労働局、雇用環境整備の違反が目立つ(10/1)
大阪労働局が公表した2025年度の育児・介護休業法の施行状況によると、同法に関する是正指導や助言・勧告は1,309件となり、前年度の254件から5.15倍に増加しました。
急増の背景には、2025年4月・10月の改正法の段階的施行を受け、大阪労働局が報告徴収を強化したことがあります。
違反内容では、育児・介護ともに、研修の実施や相談窓口の設置など、労働者が休業や両立支援制度を利用しやすくするための「雇用環境整備」への対応漏れが最も多くなっています。また、2025年4月に対象となる子の範囲や取得事由が拡大された「子の看護等休暇」についても、違反が少なくないとしています。
■感想
今回の結果で注意したいのは、「就業規則を改定したから法改正対応は完了」とは限らないことです。
育児・介護休業法では、規程の整備だけでなく、研修や相談窓口の設置など、制度を実際に利用しやすくするための職場環境の整備も求められています。
大阪労働局によると、雇用環境整備に関する改正を「知らなかった」とする事業主も多くみられたとのことです。企業としては、育児・介護休業規程の内容だけでなく、相談窓口や研修等の実施状況、子の看護等休暇への対応など、実際の運用まで含めて改めて点検しておきたいところです。