【パート賃金は「最低賃金基準」が6割超】JILPT調査で判明
2026/07/30
中小企業に求められる“納得感のある賃金制度”とは
最低賃金の引上げが続く中、中小企業の賃金決定の実態が明らかになりました。
労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施した調査によると、パート・アルバイトの賃金を決める際に最も重視されている要素は「地域別最低賃金」で、63.5%の企業が選択しました。一方、「経験年数」を考慮すると回答した企業は29.6%にとどまり、最低賃金との差は30ポイント以上となっています。
この結果からは、多くの中小企業が最低賃金を基準に時給を設定している一方で、経験や能力を十分に反映した賃金制度の構築には課題があることがうかがえます。
今回は、調査結果の概要と、企業が今後の賃金制度で検討したいポイントを解説します。
パート・アルバイトの賃金は「最低賃金」が基準
JILPTの調査では、従業員300人以下の中小企業8,754社を対象に、賃金決定の考慮要素を尋ねています。 パート・アルバイトの賃金決定要素では、 最も多かった回答は、 「地域別最低賃金」63.5% でした。 続いて、 経験年数(29.6%)、 職務(役割)(26.7%)、 成果(21.5%)、 同じ地域の賃金相場(21.0%) となっています。 最低賃金が、パート賃金を決める最も大きな基準になっていることが分かります。
正社員とは異なる賃金決定の考え方
一方で、正社員の賃金決定要素は大きく異なります。 多くの企業が重視しているのは、 職務(役割)46.6% 、経験年数46.5% 、自社の業績38.3%、 成果35.5% 、でした。 つまり、 正社員は、 職務内容 、キャリア、 成果 などを総合的に評価している企業が多い一方、 パート・アルバイトでは最低賃金が大きな判断基準となっていることが読み取れます。
なぜ最低賃金が基準になりやすいのか
近年は最低賃金が毎年大幅に引き上げられています。 そのため、 企業では、 まず最低賃金をクリアすることが優先され、 その上で時給を設定するケースが増えています。 また、 パート・アルバイトは、 短時間勤務や補助的業務が多いことから、 評価制度を細かく設計していない企業も少なくありません。 その結果、 最低賃金が事実上の賃金決定基準となっている企業が多いと考えられます。
しかし「最低賃金+10円」では人材は集まりにくい
現在は、 多くの業界で人手不足が続いています。 求職者は、 単純に 「最低賃金を超えているか」 だけではなく、 昇給制度、 評価制度、 福利厚生 、働きやすさ も重視しています。 最低賃金ぎりぎりの時給では、 採用競争で不利になるケースも少なくありません。
パートにも「納得できる昇給制度」が重要
経験年数を賃金決定要素としている企業は約3割でした。 しかし、 長く働く従業員にとっては、 経験を積んでも時給がほとんど変わらない制度では、 モチベーションの維持が難しくなります。 例えば、 入社年数、 習得業務、 保有資格 、リーダー業務 、接客スキル などを昇給基準にすることで、 従業員にも納得感が生まれやすくなります。
同一労働同一賃金の観点も忘れずに
パート・アルバイトの待遇については、 パートタイム・有期雇用労働法に基づく「同一労働同一賃金」の考え方も重要です。 単に最低賃金を上回っていればよいのではなく、 仕事内容や責任の程度に応じた合理的な待遇差となっているかを確認する必要があります。 賃金制度や昇給ルールを明確にし、従業員へ説明できる状態にしておくことが、労務トラブルの防止にもつながります。
中小企業が見直したい賃金制度
人材確保が難しくなる中、 今後は、 「最低賃金対応」 だけでは十分ではありません。 例えば、 昇給ルールの明文化、 スキル評価制度、 資格手当 、勤続年数に応じた時給アップ、 職務内容に応じた賃金設定 などを整備することで、 採用力と定着率の向上が期待できます。
社労士からのワンポイントアドバイス
最低賃金の引上げは、企業にとって避けて通れない課題です。しかし、「最低賃金に合わせて時給を上げる」だけでは、人材確保や定着にはつながりにくくなっています。 特に経験を積んだパート・アルバイトが新人とほぼ同じ時給では、不公平感が生じ、離職の原因となることもあります。今後は、経験年数や習得スキル、担当業務などを反映した昇給制度を整備し、「頑張れば評価される仕組み」をつくることが重要です。 また、毎年の最低賃金改定に備え、賃金テーブルや人件費計画を定期的に見直すことで、急激なコスト増への対応もしやすくなります。
まとめ
JILPTの調査では、中小企業の63.5%がパート・アルバイトの賃金決定要素として「地域別最低賃金」を重視していることが分かりました。 一方で、「経験年数」や「職務(役割)」を考慮している企業は3割前後にとどまり、正社員と比べると、パート・アルバイトの賃金は最低賃金を基準に決められる傾向が強い実態が明らかになっています。 人手不足が続く中、企業には最低賃金への対応だけでなく、経験やスキルに応じた評価・昇給制度を整備し、従業員が長く安心して働ける環境を整えることが求められています。 これからの賃金制度は、「最低賃金を守る」だけではなく、「選ばれる職場になるための仕組みづくり」という視点で見直すことが重要になるでしょう。
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