労災保険見直しへ議論 就労形態の多様化踏まえ 厚労省が研究会設置(2025/1/29)
厚生労働省はこのほど、「労災保険制度の在り方に関する研究会」を設置した。労災保険制度の現代的課題を包括的に検討することを目的とし、具体的には、女性の労働参加の進展やさらなる就労形態の多様化など、労災保険制度を取り巻く環境の変化に対応することが必要との認識だ。制度創設から年数が経過し、現状に適合していないものや、効果の検証などから改善すべきものを見直していく。
アイフレイルのチェックを 視野障害は労災リスクにも 東京労働局・小売業SAFE協議会(2025/1/27)
東京労働局は1月21日、TOKYO小売業SAFE協議会を開催した今年度2回目の開催となる協議会では、加齢による目の機能低下をテーマに(公社)日本眼科医会の加藤圭一副会長が講演を行った。加藤副会長は、緑内障などで見える範囲が狭くなる視覚障害により交通事故やつまずきのリスクが高まることを説明された。
行動災害防止に好事例集 転倒・腰痛リスク低減策の普及へ 横須賀労基署(2025/1/24)
神奈川・横須賀労働基準監督署は、転倒、腰痛などの作業行動に起因する労働災害を防ぐために、管内事業場が実施している対策を事例集としてまとめた。転倒防止では、滑りやすい箇所に滑り止めテープを貼り付けて転倒するリスクの低減措置を図った事例や、グレーチングカバーによる滑り防止対策、床の水濡れを清掃し終わるまでの間に転倒注意を知らせるサインの設置といった好事例を紹介している。
腰痛予防では、原料を持ち上げる際のパワーアシストスーツの着用、連続した立ち作業の負担を軽減するマットを敷設するなどの対策例を掲載した。災害発生リスクの低減や作業者の安心感向上につながっているという。
同労基署では昨年2月に、安全衛生活動を積極的に展開している管内事業場などを構成員とする「転倒・腰痛等労働災害防止推進会議」を設置。災害防止のための情報交換を行い、他事業場でも導入しやすい取り組みを事例集としてまとめた。掲載事例を参考に、職場環境の整備、安全衛生教育の活性化を進めてほしいとしている。
安全優良職長111人を顕彰 現場第一線で労災防止に尽力 厚労省(2025/1/23)
厚生労働省は1月10日、令和6年度の安全優良職長厚生労働大臣顕彰式典を砂防会館(東京・千代田区)で開催した。現場の第一線で部下の作業員を直接指揮監督し、作業の安全確保に優良な成績をあげた「安全のキーパーソン」として、製造業、建設業の職長111人を選んでいる。安藤たかお厚労政務官が賞状を手渡し、「豊富な知識や経験が、リスクアセスメントなどの取組みをより活発なものにし、職場全体の意識、安全衛生水準を向上させている」と労働災害防止へ向けた一層の活躍を求めた。顕彰は、高い安全意識を持って適切な安全指導を実践してきた優秀な職長を中心とした事業場や地域における安全活動の活性化を図ることを目的に実施している。
石綿疾病支給決定 過去5年で最多に 遺族給付請求が大幅増 厚労省確定値(2025/1/14)
厚生労働省は、令和5年度の石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況(確定値)を公表した。労災保険給付の支給決定件数は1170件で、前年度比8%の増加となり、過去5年間で最多となった。業種は建設業が6割、製造業が3割を占めている。
労災保険制度見直しへ研究会 取り巻く環境が変化 厚労省(2025/1/9)
強制適用の範囲など課題
厚生労働省は、女性の労働参加の進展や就労形態の多様化などを背景とした労災保険制度の現代的課題を包括的に検討するため、学識者で構成する「労災保険制度の在り方に関する研究会」(座長=小畑史子京都大学大学院教授)を設置した。保険の適用や給付、保険料徴収などについて、社会・経済の動きを踏まえて見直すべき事項を検討する。このほど開いた第1回会合では、各委員が同制度を巡る問題意識を表明。フリーランスおよび家事使用人の位置付けや、遺族補償給付の男女間格差への対応の検討、保険料率のメリット制の災害防止効果の検証などを求める声が挙がった。
昭和22年に制定された労災保険制度は、社会的ニーズに応じて順次改正が重ねられてきた。平成10年以降の改正には、二次健康診断等給付の創設(同12年改正)、複数就業者の増加を踏まえた通勤災害保護制度の拡充(同17年改正)、船員保険統合による適用対象の拡大(同19年改正)、複数の事業場における2つ以上の業務が要因となって生じる傷病である「複数業務要因災害」に関する保険給付の創設(令和2年改正)などがある。
近年においても女性の労働参加の進展や、副業・兼業者も含めたフリーランスの拡大など就労形態の多様化がみられ、労災保険制度を取り巻く環境が変化し続けている。
同研究会は、こうした状況を踏まえ、現代的な課題を幅広く検討するため、岸本武史労働基準局長が学識者を参集して開催したもの。
第1回会合では、労災保険制度の強制適用の範囲や特別加入制度といった「適用」関連、各給付の要件・内容や給付基礎日額など「給付」関連、年度更新やメリット制など「徴収」関連の3分野について、各委員が問題意識を表明した。
適用関連では、労災保険制度上でフリーランスをどのように位置付けるかについて議論が必要との声が挙がった。「強制適用ではなく、特別加入を促進する方が現実的」といった意見のほか、「労働基準法の適用対象とならない者であっても、完全任意ではなく、強制的な加入が必要かどうか論点になる」、「働く人が働き方にかかわりなく強制適用される制度への抜本的な改革も考えられる」といった意見があった。労基法の適用除外になっている家事使用人の取扱いについても議論すべきとの指摘があった。
給付関連では、遺族補償年金の受給資格が俎上に載せられた。同年金で最優先される受給権者である配偶者について、妻は年齢要件などがないのに対し、夫は60歳以上または一定の障害がある者といった要件が課されている。男女の就業状況が変化するなか、男女で異なる要件を設けていることについて検討が必要といった意見がみられた。
徴収関連では、事業場における労働災害の多寡に応じて一定の範囲内で労災保険料率または保険料を増減させるメリット制に関し、「災害抑止効果の有無に関する検証が行われていない」などの問題意識が示された。
同研究会は月1回程度のペースで開き、今年6~7月をめどに中間報告を取りまとめる予定。