「転居先でも信組就職」提案 他業種への流出防ぐ 全信中協(2025/2/6)
送り出し元が経歴書作成
全国143信用組合の中央組織である(一社)全国信用組合中央協会(柳沢祥二会長)は3月、会員信組の職員が転居を理由に退職を希望した場合などに、転居先で通勤可能な信組の人事窓口を案内し、再就職を勧める取組みを始める。送り出し元の信組が職務経歴書を作成し、当人が信組での経験をアピールしやすくする。全国の信組が共通の業務システムを利用しているため、経験者は即戦力となる。配偶者の転勤や親の介護などのやむを得ない事情により、他業種に人材が流出することを防ぐ考えだ。
3月以降、全信中協のホームページ内に専用ページを設けて告知する。具体的な支援策として、全信中協では履歴書・職務経歴書の共通フォーマットを作成した。送り出す信組が当人の経歴のデータを発行するもので、当人はそれをもって転居先の信組へ再就職を申し込める。全国の信組が共通の業務システムを運用しているため、各信組は経歴から当人の経験・スキルをうかがい知れる。
転職先のあっせんを行うと、無許可の職業紹介に該当する恐れがあるため、仕組みの構築に当たっては、弁護士にリーガルチェックを依頼した。当人には人事部門の連絡先を案内するに留め、具体的な求人情報の提供は行わない。当人の情報を転居先の信組へ提供することもしない。再就職を希望する職員は、自ら転居先の信組に連絡する。採用の合否は、転居先の信組が個別に判断する。
全国の信組では約1万8000人の職員が働いている。パートタイムやアルバイトの職員についても、送り出す信組の判断で支援の対象とする。
同様の施策は、全国地方銀行協会や全国信用金庫協会、日本民営鉄道協会も取り組んでいる。地銀協会員の62行が参加する「地銀人材バンク」は、2015年からの8年間で約300人が利用し、民鉄協と大手民鉄16社が18年に立ち上げた「民鉄キャリアトレイン」は、24年に中小私鉄を含む78社に拡大するなど、広がりをみせている。
全信中協の総務担当者は「全信金の取組みを知った会員信組の担当者から要望があった。仕組み自体も全信金の取組みを参考にした」と話した。