2027年4月から労災保険法が改正―企業が知っておきたい5つの変更点
2026/09/28
2027年4月から労災保険法が改正
2026年7月、「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。 今回の改正では、働き方の多様化や就業構造の変化などを踏まえ、労災保険によるセーフティーネットを広げるため、遺族補償年金の男女差の見直し、一定の疾病に関する請求権の消滅時効の延長、特別加入団体に対する規制強化など、幅広い変更が行われます。 主な改正は2027年4月1日から施行されます。厚生労働省 企業に直接影響する内容だけでなく、従業員が労災事故に遭った場合の給付にも関係する改正です。 今回は、2027年の労災保険法改正について、企業の人事・労務担当者が知っておきたいポイントを解説します。
1.遺族補償年金の「夫だけにあった年齢・障害要件」を撤廃
今回の改正で大きく変わるのが、労災によって労働者が死亡した場合に支給される「遺族補償年金」などです。
これまで、妻が遺族補償年金を受給する場合には原則として年齢要件がない一方、夫については、妻の死亡当時に「55歳以上」または「一定の障害の状態にあること」という要件が設けられていました。
2027年4月から、この夫にのみ設けられていた年齢・障害要件が撤廃されます。厚生労働省
背景には、制度創設当時と比べて女性の労働市場への参入が進み、夫婦の働き方や家計のあり方が変化していることがあります。アップロード資料でも、こうした社会状況を踏まえて男女の区別を撤廃する改正と説明されています。
◆労災保険
遺族が1人の場合の年金額も見直し
あわせて、遺族補償年金等の受給権者が1人の場合の年金額も変更されます。
現在は原則として給付基礎日額の153日分で、一定の妻については175日分となっていますが、改正後は一律175日分となります。厚生労働省
従来の制度に存在していた男女による取扱いの違いが、給付額についても見直されることになります。
2.一定の労災疾病は請求権の消滅時効が「2年から5年」に
2つ目の重要な変更が、労災保険給付を請求できる期間の見直しです。 現行制度では、療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付などについて、請求権の消滅時効は原則2年とされています。 改正後は、疾病の性質上、労災に該当するかどうかなどを容易に判断できない疾病として政令で定められるものについて、消滅時効期間が2年から5年へ延長されます。厚生労働省 アップロード資料では、今後対象となる疾病について、脳・心臓疾患、精神疾患、石綿関連疾病などが議論の対象になり得ると説明されていますが、具体的な対象疾病については今後の政令等を確認する必要があります。 労災保険 したがって現段階では、「すべての労災給付の時効が5年になる」と理解しないよう注意が必要です。
3.労災保険の「特別加入団体」に対する規制を強化
一人親方やフリーランスなど、通常は労災保険の対象とならない人でも、一定の要件を満たせば労災保険へ加入できる「特別加入制度」があります。 この特別加入の手続きを行う団体について、現在は通達などで定められている要件の一部が法令上明確化されます。 厚生労働省によると、労災保険に関する業務や業務災害防止活動を適切に実施できることなどが要件として法令に規定されます。厚生労働省 さらに、特別加入団体に問題があった場合には、行政が業務改善命令を行えるようになり、その命令に違反した場合には、その団体について労災保険の保険関係を消滅させることも可能になります。厚生労働省 アップロード資料では、近年、特別加入の対象となる業種・働き方が拡大していることを背景として、制度を運営する団体の体制や事務処理能力などをより厳格に確認する方向性が示されています。 労災保険 特別加入団体にとっては、これまで以上に適正な事務処理と災害防止活動が重要になります。
4.小規模な個人経営の農林水産業にも労災保険を適用へ
現在、労働者を使用する事業は原則として労災保険の適用事業となりますが、一部の小規模な個人経営の農林水産業については、暫定的に任意適用とされているものがあります。 今回の改正では、この暫定任意適用事業の取扱いを廃止し、該当する事業についても労災保険の適用事業とすることになりました。厚生労働省 ただし、この変更は2027年4月1日に一律施行されるわけではありません。 厚生労働省によると、改正法が公布された2026年7月17日から起算して5年以内の政令で定める日から施行されます。厚生労働省 対象となる農林水産業の事業主については、今後示される具体的な施行時期や手続きについて確認していく必要があります。
5.社会復帰促進等事業の不服申立て手続きも変更
今回の改正では、労災保険給付そのものだけでなく、不服申立ての仕組みにも変更があります。 社会復帰促進等事業に関する決定について不服がある場合、これまでは行政不服審査法に基づく手続きが行われていました。 改正後は、労災保険給付に関する決定と同様に、労働保険審査官への審査請求、労働保険審査会への再審査請求という仕組みに整理されます。厚生労働省 アップロード資料では、この変更によって、同じ原因となった業務災害について労災保険給付と社会復帰促進等事業の双方が問題となる場合に、審査手続きを同じ仕組みにすることが説明されています。 労災保険
企業にとって今回の改正はどう影響する?
今回の改正には、一般企業が日常的に新たな届出をしなければならないような変更だけが並んでいるわけではありません。 しかし、労災事故が発生した場合には、従業員やその遺族に対する給付内容や請求期間などに直接関係します。 特に人事・労務担当者は、従業員から労災について相談された際に、古い制度を前提として「対象にならない」「請求期限を過ぎている」などと判断してしまわないよう注意が必要です。 また、特別加入団体や、現在暫定任意適用となっている農林水産業の事業主については、今回の改正がより直接的に影響します。 制度の施行に向けて、今後公表される政令・省令・通達なども確認していく必要があります。
社労士からのワンポイントアドバイス
労災保険は、「事故が起きたときに手続きをすればよい制度」と考えられがちですが、企業にとってより重要なのは、事故発生時に適切に労災として対応できる体制と、事故そのものを防止する仕組みを平時から整えておくことです。 今回の改正では給付内容や時効、適用範囲などが見直されますが、企業として確認しておきたいのは、制度改正だけではありません。 労災が発生したときの社内報告ルート、医療機関への案内、労働者死傷病報告を含む必要な手続き、事故原因の検証と再発防止まで、一連の対応ができる状態になっているかを確認しておきましょう。 特に「労災かどうか会社では判断できない」というケースで、会社側だけの判断によって申請を止めてしまうことは避ける必要があります。
まとめ
2027年4月から施行される改正労災保険法では、主に次のような変更が行われます。
①遺族補償年金等について、夫だけに設けられていた年齢・障害要件を撤廃
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②遺族が1人の場合の遺族補償年金等を原則175日分に統一
③一定の疾病について、労災保険給付の請求権の消滅時効を2年から5年へ延長
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④特別加入団体の要件を法令上明確化し、業務改善命令等の仕組みを導入
⑤ 社会復帰促進等事業に関する不服申立ての仕組みを見直し
さらに、小規模な個人経営の農林水産業に関する暫定任意適用制度についても廃止されますが、こちらは2026年7月17日から5年以内の政令で定める日から施行される予定です。厚生労働省
今回の改正は、働き方や家族のあり方の変化に対応しながら、労災保険の対象や給付を見直すものです。
企業の人事・労務担当者も、「2027年4月から何が変わるのか」だけでなく、自社の労災発生時の対応体制が適切かを、この機会に確認しておきましょう。
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