SkyBlue社会保険労務士法人

hatarakikata

お問い合わせはこちら

これからの会社に必要な“働く時間を選べる職場”

「もっと働きたい」社員はわずか4.3%?これからの会社に必要な“働く時間を選べる職場”

2026/10/06

「もっと働きたい」社員はわずか4.3%?

 人手不足が深刻になるなか、「もっと働いてもらいたい」「勤務時間を増やせれば人手不足を補えるのでは」と考える企業もあるかもしれません。 一方、働く人の意識は必ずしも「もっと長く働きたい」という方向には向かっていないようです。 東京大学社会科学研究所が28~60歳の男女を対象に実施した調査では、就業者3,319人のうち、労働時間を「長くしたい」と回答した人は144人、4.3%でした。 男性では2.8%、女性では5.5%です。一方、「短くしたい」と回答した割合は男性44.1%、女性32.5%でした。 今回は、この調査結果と男性の時短勤務の事例から、これからの企業に求められる「働く時間の選択肢」について考えてみます。

正社員で「もっと長く働きたい」はごく少数

 今回の調査で興味深いのは、雇用形態によって結果に大きな違いがみられることです。 労働時間を「長くしたい」と回答した正社員は、男性1.9%、女性0.7%でした。 これに対して非正規雇用では、男性12.1%、女性11.9%となっています。 調査を担当した研究者は、収入の少なさや生活の苦しさから、労働時間を長くせざるを得ない人が多い可能性を指摘しています。実際、「暮らし向きが貧しい」と感じている人や年収が低い人ほど、労働時間を長くしたい割合が高い傾向もみられました。 つまり、「長く働きたい」という希望が、必ずしも仕事への意欲の高さだけを意味するわけではないということです。 なお、今回の4.3%という数字は東京大学社会科学研究所による調査結果です。「日本の労働者の95.7%が長く働きたくない」という意味ではない点には注意が必要です。

「収入」より「家族との時間」を選ぶ社員も

 記事では、2人の子どもを育てながら、1日2時間の時短勤務をしている40歳の男性会社員が紹介されています。 妻がフルタイム勤務に戻ることをきっかけに、自ら時短勤務を選択しました。 その結果、手取り収入は以前の7割程度になったものの、子どもの送迎や宿題を見る時間など、家族と過ごす時間を確保しています。 ここで注目したいのは、時短勤務を選択したのが男性であることです。 育児と仕事の両立支援というと、これまでは女性社員を中心に考えられることが少なくありませんでした。しかし、共働き世帯が増えるなか、男性社員についても育児休業や時短勤務などを利用しながら働き続けるケースが今後さらに増えていくことが考えられます。 企業側にも、「育児との両立支援は女性社員の問題」という前提から離れて制度を考える視点が求められます。

制度があっても「使いにくい職場」では意味がない

 今回の記事で特に考えさせられるのが、時短勤務を利用する男性社員自身が、 「自分は正社員として使い勝手が悪い」 と感じている点です。 会社や同僚は時短勤務について理解しているものの、本人が退社した後にトラブルが起きれば仕事が止まってしまうのではないかという不安を抱えています。 これは、企業が両立支援制度を考えるうえで重要な問題です。 時短勤務制度を就業規則に定めるだけでは十分とはいえません。 特定の社員にしかできない仕事が多かったり、時短勤務者が帰った後の対応が特定の同僚に集中したりする職場では、本人も周囲も制度を利用することに負担を感じる可能性があります。 「制度があること」と「制度を安心して利用できること」は別の問題です。

時短勤務者だけでなく「周囲の社員」への配慮も必要

 両立支援を進める際には、時短勤務者だけを見るのではなく、その職場全体を見る必要があります。 たとえば、時短勤務者が退社した後の業務を毎日同じ社員が引き受けていれば、その社員に残業や心理的な負担が集中する可能性があります。 反対に、「周囲に迷惑が掛かるから」という理由で制度を利用しにくい雰囲気になれば、育児や介護を抱える社員が働き続けることが難しくなります。 大切なのは、どちらかに我慢を求めることではありません。 業務の属人化を減らす、複数の社員が対応できるようにする、引継ぎ方法を決める、仕事量や人員配置を見直すなど、働く時間が異なる社員が一緒に働ける業務体制をつくることが重要です。

「長く働ける会社」から「働き方を選べる会社」へ

 人手不足への対応というと、採用を増やすことや、一人ひとりの生産性を高めることに目が向きがちです。 しかし、今いる社員が長く働き続けられる環境をつくることも重要な人手不足対策です。 社員の事情は、人生のなかで変化します。 育児で一時的に勤務時間を短くしたい人もいれば、介護のために残業を減らしたい人もいます。一方、収入を増やすために勤務時間を増やしたい人もいるでしょう。 そこで企業に求められるのは、全員に同じ働き方を求めることではなく、それぞれの事情に応じた働き方を選択できる環境を整えることです。 短時間正社員、時差出勤、テレワーク、残業を前提としない業務設計など、会社の業種や職種に応じて選択肢を検討することが、人材の定着にもつながります。

働き方の柔軟性は採用にも影響する

 今後は採用活動でも、「いくらもらえるか」だけでなく「どのように働けるか」が会社選びの重要な要素になっていくことが考えられます。 特に育児や介護などと仕事を両立する人にとって、残業時間や勤務時間の柔軟性、休暇の取得しやすさなどは、長く働ける会社かどうかを判断する材料になります。 企業側から見れば、柔軟な働き方は単なる福利厚生ではなく、採用・定着・離職防止を考えるうえでの人事戦略の一つとして捉えることもできます。

社労士からのワンポイントアドバイス

 両立支援制度を整備するときは、「制度を作ったから終わり」にしないことが重要です。 実際に時短勤務などを利用する社員が出たときに、 誰が業務を引き継ぐのか、本人の仕事量をどう調整するのか、周囲の社員に負担が偏っていないか、評価やキャリアに不利益を感じさせる運用になっていないか まで確認してみましょう。 特に、ある社員が早く帰るだけで仕事が止まってしまう職場では、両立支援以前に「仕事の属人化」が課題になっている可能性があります。 働き方の多様化をきっかけに、業務分担や人員配置そのものを見直すことも大切です。 

まとめ

 今回の調査では、労働時間を「長くしたい」と回答した人は4.3%にとどまり、正社員ではさらに低い割合となりました。 一方で、働く時間を増やしたい人のなかには、収入や生活上の事情を抱えている人もいます。 これからの企業に必要なのは、単純に「長く働くか、短く働くか」を決めることではなく、社員がライフステージや事情に応じて働き方を選択しながら、キャリアを継続できる職場をつくることではないでしょうか。 人手不足の時代だからこそ、採用するだけではなく、今いる社員が「この会社なら働き続けられる」と思える環境づくりが、ますます重要になっていきそうです。

----------------------------------------------------------------------
SkyBlue社会保険労務士法人
大阪府大阪市北区東天満2-9-4 千代田ビル東館10階G室
電話番号 : 06-6352-1145
FAX番号 : 06-6352-1146


----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。